カオスの弁当

中山研究所blog

空気圧コンピュータSFの妄想ノート

 「空気圧コンピュータSF」てなアイデアを昨日の朝、知った。

→ これである。

https://twitter.com/fhswman/status/1590359678877282304?s=46&t=Xs_Tb6H93Ow9-kQbbuXGEA

 

 さて色々妄想は捗った訳だが、計算機をそもそも空気圧で動かそうという発想は、電磁気力があんまり頼りにされていない様な世界でないと中々出て来ないだろうもんである。

 そんな世界では、空気圧よりもより信頼性の高い、水圧の方が個人的には用いられそうなもんだとは思うのだが、何せ水は重たい。大量に用いるとなったら装置も巨大になる訳で、そんな沢山の水を溜め込むだけの貯水装置となると非常に堅牢に建造しなくてはならなくなる。実利面で非常に高くつくものである。

 となるとーー空気圧もとい圧縮空気の出番である。恐らくそれは水道管と同じく、ヨーロッパ的な世界観であれば矢張り古代ローマ的な文明の遺産を用いるであろう。

 モーター(ポンプ)のない段階で水を使った演算装置を作ろうとする世界は多分、相当密閉度の高い管やら容器を作り得るだろう。水をそれらの管なり装置の中に満たすよりも、気体でもって満たした方がずっとカラクリもスムーズに動くだろう。

 

 ……となると、結局、「ニューマチックパンク」は「スチームパンク」の亜種に終わるのではないか、という気もしてこないでもない。

 だが、敢えて「空気圧」に拘り、それを「蒸気」と区別するなら、スチームパンクの世界における主な燃料の相違に配慮すればいいのではなかろうか?

 詰まり、スチームパンクの前史としてのニューマチックパンク、である。

 

 この「前時代」において、燃料は専ら薪・炭であり森林資源である。それが当然ながら制約となって、理論的にはスチームパンクに後一歩、という段階にあって、足踏みしている状態が石炭の大規模な採掘によってブレイクスルーを経た……という様な筋を描けば、まあ何だかいけなくもなさそうである。

 更にいえば、そうした石炭の採掘に至る過程というものを想像するに、鉱山の開発における「送気」の問題が、スチームパンクもといニューマチックパンクのアクチュアルな場面として挙げられなくもない。

 

 芸術や宗教・政治の面では、パイプオルガンの様な楽器もそのテクノロジーの洗練に寄与するものであろう。だが、何よりか「風」を別のエネルギーに変換する装置とそのアイデアが結び付いて、空気圧コンピュータは誕生しそうなものである。

 風車による灌漑用水なんかが先ず、水圧コンピュータに導入され、そこから水車をモーターがわりにした吹子でもって稼働する空気圧コンピュータなんぞは割と「アリ」だろう。

 

 また、気圧差・高低差を利用したコンピュータが鉱山の地下深くで造られても面白い。

 ただ、あんまりそれは上手くいかないかもしれないーーというのは、空気圧コンピュータは注入した空気を逃す必要があるからで、その空気(水の場合でも)を上手く逃す装置も必要になるからである。それをなんとか上手いこと想像出来ればこのアイデアも可であろう。

 

 大規模な水圧コンピュータは高低差を利用した巨大な運河の様なものになるだろう。それより小規模になるとはいえ、空気圧コンピュータも大仕掛けになるだろう事は既に述べた。

 セントラル・ヒーティングシステムの様な、建物の内部に配管し、温度差も勘定に入れた設定で、その建物自体がなにかを「考える機械」に仕立て上げる様な、そんなアイデアも可能かもしれない。「温泉コンピュータ」もニューマチックパンクの世界にはあるやもしれない。(そしてそれは概ね、鉱山の直ぐ近くにあったりもするのだ!)

 

  小型の空気圧コンピュータはオルガンの様に人間が吹子を動かす事になるだろう。多分、それが「パソコン」の走りとして位置づけられ、馬や犬でも、兎も角、動物がモーターがわりに日がな一日ずっとカラクリを動かすものになるだろう。

 

 用途としてはコンピュータだから色々考えられるが、結局それらは「時計」や「暦の計算」、天文学占星術に用いられる機械になるだろう。商売でも用いられるだろうが、多分ソロバンにも敵わないのではないか…。

 空気圧コンピュータを動かす事自体が権力の誇示や、政治的・宗教的意味合いを持つ世界がニューマチックパンクの世界である。丁度、バッハのパイプオルガンの演奏の様に、それらを操作する専門の一族がいるくらいのーーだもんだから、それなりにエンジニア達は敬意を払われたりする存在になるだろう事は考えられる。

 

 「占いマシーン」という見方にややもすれば落ち着くかもしれないが、その可能性に気付いたものたちが、よりその性能やら精度を高めようとして、色々な気体を試したりする過程があったりして、これがコンピュータの「小型化」に繋がる流れを産みそうな感じもする。

 燃料問題が石炭の実用化に伴い力技で解決された後の進歩は省エネ化と小型化であり、その結果、進化した空気圧パソコンは、かつてビル一棟程の大きさのあった「温泉コンピュータ」の様に温度差を利用して湯気を出す事もなく稼働してそうなもんである。

 

 更に高速化の点でいえば、空気の体積の差を大きくする事で可能となる。方法は圧を強くするのと、温度差を大きくするのであろうが、これは管の一方をストーブに通し、もう一方をバケツに浸しておくような感じになるのだろうか?

 (なまじ筆者がド文系な為に、酷い文章である)

 

 機械式コンピュータに対する優位性は、多分、長年の蓄積に基づく信頼性と安定性にある気がする。無論、両者の競争は熾烈を極め、複合的な装置も登場しそうなものである。

 だが、なまじ省エネ化・小型化を企図した所で、空気圧コンピュータがバカにならない程、リソースを食う代物である事には変わりがなく、軍事面で機械式コンピュータが普及すると同時に、空気圧コンピュータはお役御免となりそうな気配がする。

 ただ、船などの乗り物や建物への組み込み等の面では、長年来の技術的蓄積で空気圧コンピュータが優勢を誇るだろう。移動の際の振動や衝撃は機械式コンピュータの大敵となりそうだ。

 船舶や陸上を移動する巨大な乗り物への空気圧コンピュータの導入は恐らく「据え置き型」(ビル一棟タイプ)よりは劣るだろうが、それはパソコンよりも物理的に大きい分、より高性能ではあるのだろう。

 

 複数のコンピュータを連結する技術は、空気圧コンピュータの成り立ちからは想像し辛い気もする。そうした分、余計に時間もエネルギーも消費するからであるが、例えば停泊中の船のコンピュータと港のホテル型コンピュータを繋いでいくような感じで有ればーー詰まり、相当近い距離を結ぶ様な形で有れば有り得そうな話である。

 

 この他、Twitterの弊アカウントでもぼちぼち呟いたが、取り敢えず、その後で考えたものはこんなもんである。

 とてもではないが、今の自分には書けそうもないジャンル(そもそもサイエンスのSの字も分からない)だが、いづれ何かしら筆を執る事がある日の為に取り急ぎ、投げておく。

 

(2022/11/11)